今さら聞けない、働き方改革のガイドラインとは?

2021/01/26 働き方改革

企業リスク診断

政府が働き方改革を打ち出し、2019年からさまざまな関連法律が施行されてきました。そのため、企業は対応する必要があります。

しかし、どのような法律ができて、企業ではどのように働き方改革を進めていけばいいのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

そこで働き方改革のガイドラインを把握しておくことをおすすめします。今回は、働き方改革のガイドラインについてご紹介します。

働き方改革について

働き方改革について
働き方改革は、1億総活躍社会の実現に向けて立てられた取り組みの1つです。

日本では、少子高齢化に伴う労働人口の減少、育児や介護との両立など働く人のニーズが多様化しているなどの問題に直面しています。特に育児や介護との両立が難しく、働きたくても働けないという方たちがたくさんいます。

働き方改革では、働きたい人が働ける環境を作り、1人でも多くの労働人口を増やすことが目的です。

日本の働き方の課題

働き方改革は、働きたい人が働けるような環境を作るだけはありません。実は、これまでの日本の働き方には課題がありました。

まず、挙げられるのが、長時間労働です。長時間働くことにより、過労から病気などにつながることもあるため、社会問題となっています。また、日本では長時間労働の影響もあり、生産性が低いともいわれています。

他にも、正規雇用と非正規雇用の格差が挙げられます。正規雇用と非正規雇用、どちらも同じ業務をしているのに賃金や処遇に格差があることが問題視されています。

働き方改革関連法について

こうして日本が抱えている労働問題について、解決するために働き方改革関連法が制定されました。働き方改革関連法とは、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が正式名称です。

2016年に政府は、日本が抱える労働の問題について解決を目指して、働き方改革実現会議が開催されました。この会議や業種別の働き方改革に関する連絡会、協議などを経て、2018年に働き方改革関連法案が成立しました。そして、この働き方改革関連法は、2019年に順次施行されています。

働き方改革におけるガイドラインがある

働き方改革におけるガイドラインがある
厚生労働省は、働き方改革を促進させるために、施行された働き方改革関連法の内容をふまえて、働き方改革に関するガイドラインを制定しました。

また、実現に向けたロードマップも制定されています。ロードマップには、日本の働き方の状況と課題、そして政策を樹形図にまとめたものです。

ロードマップを参照することで、社員からみた働き方の課題や対応など具体的な実行時期まで書いてあります。

ガイドラインで抑えておきたい4つのポイント

ガイドラインで抑えておきたい4つのポイント
ここでは、ガイドラインの中でも抑えておきたい4つのポイントをご紹介します。

【1つ目】労働時間法制の見直し

最も注目されているのが、長時間労働の課題です。そこでガイドラインに盛り込まれているのが、労働時間法制の見直しです。従来の労働時間法では、働きすぎを防止できなかったため、見直されました。

【労働時間法制の見直し内容】
・残業時間の上限規制
・勤務間インターバル制度の導入
・月60時間を超える残業は、割増賃金率が引き上げられる
・労働時間を客観的に把握する
・年間5日の有給休暇の取得義務
・フレックスタイム制の拡充
・高度プロフェッショナル制度の新設

この7つが新設されました。下記で詳しくご紹介していきます。

残業時間の上限規制

1947年の労働基準法の制定以来、はじめて残業時間に上限規制が設けられています。これまでは、法律上では残業時間の上限はなく、行政指導のみでした。

新しく設けられた規制は、月45時間、年間360時間以内と決められています。また、臨時的な事情がある場合でも、複数月で平均80時間、月100時間未満、年720時間と上限があります。

勤務間インターバル制度の導入を促進

勤務間インターバル制度の導入が努力義務として定められています。勤務間インターバル制度とは、退勤後、次の出勤までに一定時間以上の休息(インターバル)を確保する仕組みのことです。これは、社員の睡眠時間や生活時間などを十分に確保して健康を維持することを目的としています。

もし残業をして一定時間以上の休息を取る場合、始業時間より出社が遅れてしまうときは始業時間の繰り下げや遅れた分は出勤とみなすなどの対応を求められます。

月60時間を超える残業は、割増賃金率が引き上げられる

月に60時間を超える残業をする場合は、割増賃金率を引き上げが適用されます。これまでは残業が月60時間を超える場合、大企業は50%、中小企業は25%の割増賃金を支払うと決められていました。それを大企業だけではなく中小企業も50%に引き上げられます。

労働時間を客観的に把握する

健康管理の観点から、全ての社員の労働時間の状況が観客的に把握することが義務付けられました。これまでは、裁量労働制を利用している方や管理監督者は規定の対象外でした。

しかし、今回は裁量労働制が適用される方や管理監督者も対象となります。全社員、タイムカードやPCのログインデータなどから客観的に計測できる方法で、労働時間を把握しなければなりません。

年間5日の有給休暇の取得義務

これまでは、社員が自ら有給休暇の取得を申し込まなければ取得できないのが一般的でした。

年10日以上の有給休暇を付与している社員に対して、最低5日間の有給休暇を取得させることが義務付けられました。企業側から有給休暇の取得を推進し、取得を促します。取得のタイミングの希望を聞き取ったり、休暇がとりやすい労働環境の整備をする必要があります。

なお、義務となるため、違反した場合は罰則が設けられています。

有給休暇や労働時間の管理はどうする?
エクセルやタイムカードなど、従来の勤怠管理では、管理が行き届きにくいでしょう。そこで、勤務管理システムを導入がおすすめです。社員の勤務時間の管理はもちろん、シフトの申請や、有給休暇の申請も可能です。有給休暇の取得がされていない場合は、事前に通知されるシステムもあります。

フレックスタイム制の拡充

労働者が出勤時間や退勤時間を自由に決められる制度をフレックスタイムといいます。働き方改革では、フレックスタイム制の導入推進はもちろん、さらに柔軟に運用できるように改定。労働時間の精算期間を1カ月から3カ月へと引き伸ばしました。労働時間の精算期間が引き伸ばされたことで、3カ月の間に労働時間を調整できるようになりました。

高度プロフェッショナル制度の新設

高度な専門的知識を持っている方に対して、労働時間ではなく労働の成果で報酬を決める制度として高度プロフェッショナル制度が新設されました。これは、対象者が時間に制限されずに、裁量を持って働くことが可能です。ただし、制度の導入には、労使委員会の決議や所轄労働基準監督署長へ決議の届け出、本人の同意などの手続きが必要になります。

労働者の健康を守るために、年間104以上かつ4週4日以上の休日を確保することが義務付けられています。インターバル規制や在社時間などの上限設定なども設けられ労働者を守るための対策を取る必要があります。

【2つ目】同一労働同一賃金

大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月に同一企業での正規と非正規の間に不合理な待遇差を禁止されることになりました。雇用形態にかかわらず、仕事内容が同じ場合は、正規や非正規と区別せずに基本給やボーナス、福利厚生などにおいて同等の対応を行う制度のことです。

また、非正規雇用労働者は、正規雇用の社員との待遇差を感じた場合は、会社側に説明を求めることができます。そして会社側には説明する義務を負います。

待遇差の問題により起こった事業主と労働者との紛争を裁判以外の方法で解決する裁判外紛争解決手続きの対象となりました。そのため、事業主と労働者の双方または一方からの申し出により、都道府県労働局が無料、非公開で紛争解決を手助けしてくれます。

【3つ目】テレワークの推進

テレワークの推進
柔軟な働き方としてテレワークの推進もしています。テレワークは、働く場所や時間を問わない働き方です。労働者の中にはテレワークでの働き方を希望している方も多く見られます。法律は制定されていませんが、ガイドラインには促進のポイントが記載されています。

テレワークは雇用型と自営型に分けられていて、それぞれのポイントをご紹介します。

雇用型テレワーク

雇用型テレワークとは、企業と雇用契約を結んでいる社員が、自宅やサテライトオフィスなどの所属しているオフィスとは別の場所で働くことです。

通勤時間の削減や、育児・介護などと両立しやすいなどといったメリットがある働き方です。テレワークとフレックスタイム制を同時に導入することで、さらに社員は柔軟な働き方を選ぶことができます。

しかし、セキュリティリスクや、長時間労働などの不安もあります。アクセス制限などのセキュリティ対策を行ったり、テレワークでの勤務についてルール(規則)を設けたりすることが大切です。

非雇用型テレワーク

非雇用型テレワークは、名前の通り、会社に属さずに委託を受けて自宅などで仕事する働き方のことです。自営型テレワークと呼ばれることもあります。

非雇用型のテレワークをしている方に対しても、ガイドラインが設けられています。こうした非雇用型のテレワークを行っている方は、企業の人材不足の解決策になっていて重要視されています。

しかし、契約についてトラブルが多くなっていて、現在の課題になっています。こうしたトラブルを防ぐために、仲介手数料や著作権の取扱の明示など、仕事を発注する際に求められるルールを明確化するといったガイドラインが定められています。

【4つ目】副業と兼業の推進

収入を増やしたい、スキルを身につけたい・活かしたいなどといった理由から、副業や兼業を望んでいる労働者が多くいます。副業や兼業を認めていない企業は多くありますが、実はメリットもあります。労働者は社内では得られないスキルを身につけられることはもちろん、優秀な人材の確保や流出を防ぐことができるなど、企業にもメリットがあるのです。

ただし、社員の労働時間が長くなってしまうことや、機密保持や競業避止対策が必要になることもあります。副業や兼業を許可する場合は、状況を把握できる仕組みなどを作ることが大切です。

まとめ

今回は、今さら聞けない働き方改革のガイドラインの内容についてご紹介しました。

コロナ禍により、テレワークの導入が促進。そのため、働き方改革について見落としてしまいそうな部分があるかもしれません。すでに施行されている働き方改革関連法もあるため、再度おさらいしておきたいところです。

特に中小企業は、2021年の4月に同一労働同一賃金が適用されるため、改めて就業規則や仕事内容の確認など適用に向けて準備をする必要があります。

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