働き方改革の事例まとめ。業種や職種ごとに違う施策を参考にしよう
2021/02/02 働き方改革政府が推奨する「働き方改革」によって、さまざまな企業が労働環境の改善に取り組んでいます。
どのような改革を行っているか、業種や職種、企業規模ごとの違いを見ていきましょう。自身の企業で行う際の参考にしてください。
働き方改革とは?働き方改革の目的について
働き方改革とは、政府が打ち出している働き方についての重要政策のうちの1つです。
働き方改革がなぜ発案されたのか、その目的について見ていきましょう。
【働き方革命の目的1】労働人口減少への対応
少子高齢化によって、日本の人口は年々減少しています。このまま減少が続いていくと、2100年頃には日本の人口は5000万人を切るとの予測が出されており、労働人口も減少傾向にあるのです。
そこで労働人口を増やすため、高齢者や主婦層でも働きやすい環境を作り、多様な働き方を作ること。そして、少子化対策の一環として労働状況を変えていこうというのが、働き方改革の狙いです。
【働き方革命の目的2】ワーク・ライフ・バランスの充実
働き方改革では「ワーク・ライフ・バランスの充実」という方針が打ち出されています。これは、労働時間と個人の時間のバランスを取っていくことを目的としたものです。
具体的には、残業時間の短縮や、有給休暇の取得の義務づけ、割増賃金の値上げやフレックスタイムの導入の推奨などがあります。
労働時間が減ることでプライベートの時間が増えれば、生活の充実や消費の促進を促すことに期待が持てるでしょう。
【働き方革命の目的3】企業の生産性向上
労働時間を短縮したとしても、そのまま労働力が低下してしまっては意味がありません。そこで、長時間労働にならないように配慮しつつも生産性の向上させることが企業にとっては課題となっています。
業務効率を図れるように改善し、生産性の向上を目指す必要があります。
そのため、ITツールやコミュニケーションツールの導入により、業務の効率化やコミュニケーションの円滑化させています。他にも「見える化」によって情報共有をしやすい環境作りなど、生産性向上のため、さまざまな改革に取り組む企業が多くあります。
重要な働き方改革に関する法律
2019年4月から、働き方改革関連法が適用されはじめています。大企業と中小企業で適用時期が異なる場合もありますが、あらためておさらいしておくことも大切です。
ここでは、働き方改革に関する法の中でも重要な法律についてご紹介します。
残業時間の罰則付き上限規制
・大企業:2019年4月から実施
・中小企業:2020年4月から実施
残業時間の規制は、すでに適用されています。労働時間は、原則で1日8時間、週40時間と決められています。ただし、36協定で定める範囲内で時間外労働を認めることが可能です。
36協定で定められている時間外労働の上限は、原則1カ月45時間・年間で360時間です。繁忙期などの特別な理由がある場合でも、年720時間、月に100時間未満という制限があります。
この労働時間の規制に違反した場合は罰則の対象になるため、厳守しなければなりません。
5日間の有給休暇取得の義務化
全企業:2019年4月から実施
年10日以上の有給休暇が発生する労働者に対して、必ず5日の有給休暇を取得させなければいけない法律です。義務となるため、5日以上有給休暇が取得できなかった場合は労働基準法違反となり、罰則の対象となります。計画的付与制度も利用しながら、誰もが有給休暇を取れるような環境にする必要があります。
同一労働・同一賃金制度
正規雇用と非正規雇用の不合理な格差をなくすため、職務内容が同じであれば、雇用に関わらず同じ賃金を支給する制度のことです。こちらは、大企業では2020年から、中小企業では2021年の4月より適用されます。罰則はありませんが、労働者側には権利が主張しやすくなります。大きなトラブルを防ぐためにも、業務内容の規定には明確にしておくと良いでしょう。
特に、労働時間に関する規制と、有給休暇に関する義務は、違反すると罰則の対象となります。企業は、社員の健康を守るためにも、働き方改革関連法を厳守すべきと言えるでしょう。
業種・職種別の働き方改革の施策事例
まず、業務時間の短縮や社員の負担を減らすためには、業務内容の見直しや改善が必要です。
業務を改善するために、他の企業はどんな施策を打ち出しているのかを、業種ごとの特色をご紹介します。
製造業
製造業で、働き方改革に取り組まなければならないのは、主に作業現場における改革でしょう。そのために注目されているのが「ICT」の活用です。
ICTは、IT(Information Technology)にC(Communication)を加えたものです。インターネットやクラウドのツールを使って、従業員同士での情報共有をしやすくすることで、全体的な業務の透明化を図ります。
細かな作業指示がなくても現場担当者が率先して動いたり、問題が起こった時に迅速な報告をしたりなど、現場での連携や効率を高めるための工夫が、多くの製造業の作業現場では見られているようです。
建設業
建設業は、労働時間に対する労働賃金の低さが問題になっています。そこで積極的に行われているのが、労働時間の短縮と賃金を引き上げるための取り組みです。
労働時間問題については、現状で週休1日制が通常となっているところを2日に引き伸ばしたり、発注者に対し適切な工期設定を推進しています。
また、技術や経験を持つ者に対しては賃金を引き上げることで、賃金の全体的な引き上げと積極的な技術の習得を行ってもらうことを従業員に対し試みているようです。
IT企業
Webサイトの制作やデータ入力、プログラムコードの作成などの作業は、インターネットにつながっている環境とツールさえあれば作業場所は問わないことがほとんどです。
そのため、自宅や外出先など、オフィス以外の場所で働く「テレワーク」を推進する企業が増えてきました。
テレワークのメリットは、家でも仕事ができるようになること。通勤時間が削減されるため、その分の時間を育児や介護の時間に使えるようになります。
自宅で家事や子育てをしながら働けるようになれば、高齢者や主婦層であっても労働力として採用できるようになるでしょう。
小売業、サービス業
小売業、サービス業での問題は、労働時間に反して生産性の低さにあります。ある調査によれば、日本のこれらの業界は米国の生産性の半分という結果もあるようです。
生産性や労働時間の改善のために試みられているのが「無駄な業務の廃止」です。
ある旅館では、客室まで料理を運ぶ昔ながらのサービスを廃止した結果「料理が冷めている」というクレームも減り、また持ち運ぶ従業員の負担も減ったと言います。
ユーザーや従業員の意見を分析し、無駄な業務や仕組みを取り除くことで労働時間が短縮され、サービス品質の向上にもつながっていくでしょう。
自治体
働き方改革は企業だけではなく、自治体や教育機関でも必要とされています。自治体においては、地域に合った働き方を実現すること、職員同士の綿密なコミュニケーションが課題となっているようです。
都心と地方の地域、高齢者の割合など、地域によってはさまざまな問題がありますが、これらを分析して対処しなければなりません。そのためには、住民や職員からのヒアリングがしやすい環境を整える必要があります。
インターネットによる窓口の設置や、案件を担当者に効率よく伝えるための伝達網が、効率化において非常に重要です。そのためのコミュニケーションツールの導入や、ルールの見直しに着手している自治体は多くあるようです。
職種別の働き方改革施策事例同じ企業の中でも、業務改善には異なった方法が必要です。例えば、事務職と営業職では働き方そのものが違うため、同じ改革案では成功しないことも少なくありません。
そこで、今度は業種別に業務改善の具体例をご紹介します。業種について分析し、それぞれに適切な改革を施しましょう。
営業
営業で行われている業務改革の一案として、「移動中にリアルタイムで情報が共有できるようにすること」をご紹介します。
1日のうちで、商談のための資料確認や上司への連絡、報告書の作成といった業務はかなりのウエイトを占めるでしょう。これらについて、クラウドサービスを使う企業が増えています。
クラウドサービスでは、PCだけではなくスマホなどのモバイルでも利用できます。会社からアップロードしたデータを、社員がすぐに見るといったことが可能です。
報告書の作成や勤怠管理もスマホでできるため、営業の仕事が終わったら直接家に帰ることもできます。営業担当者の時間効率を改善することができるでしょう。
事務
事務の仕事で必要なのは、ルーチンワークの自動化です。
例えば、取引先から送られてきたメールを確認し、関係者に対し転送するといった一連の作業が自動化できれば、生産性の向上に大きく貢献できるでしょう。
「見える化」も改善の一案です。担当者が少ない事務作業などでは、作業状況を把握しているのが作業者本人しかいないといった、情報の不透明化がよく発生します。担当者への引き継ぎや、突発的な対応を強いられた際に問題が発生するケースもあるでしょう。
そのため、部署や業種にかかわらず業務内容や作業進捗をあらかじめ共有しておくことが求められます。フローチャートの作成や情報共有によって、無駄な作業の削除につながるケースも出てくるでしょう。
仕事の引き継ぎや、他の事務との連携が簡単にできるようになり、ヘルプや引き継ぎの際に問題が起きる可能性が少なくなります。
管理職
管理職に求められているのは、他人の業務や時間管理というのが一般的ですが、管理職自身の管理方法の改善を進めている企業も少なくありません。
とある企業では、会議の在り方自体を検討しているようです。
会議というのは、一部では最も時間の無駄だと言われています。2時間の会議に10人の社員が出席し、何の生産性も生まれない場合は、合計20時間の労働時間が無駄になっていることになるのです。
報告だけならインターネットを利用して十分行えます。部下からの報告も、メールではなく全体掲示板などで行えば自分の好きな時間で確認できるでしょう。
管理者自身の生産性を向上させるためには、「不要な業務の廃止と削除」が重要になります。
企業規模別の働き方改革施策事例
今度は、企業規模に合わせた業務改善の事例をご紹介します。大企業と中小企業それぞれでどのような改善を試みているのでしょうか?
大企業
大企業の改善は大規模かつ、1人ひとりの社員が簡単に行えるようなものが適切です。
とある製薬会社では「裁量労働制」と「職務給制度」を導入した例があります。
裁量労働制とは、「見なし時間」を設定する労働制度です。見なし時間が8時間とした場合、7時間働いても9時間働いても8時間分の給与となります。(もちろん、労働超過した場合はそれに応じた給与は支払われます)
裁量労働制により、労働者が自身の時間をコントロールできるようになりましたし、早く仕事を終わらせれば、その分給与をもらった上で自分の時間を増やすことも可能です。
モチベーションがあがり、労働時間の短縮にもつながっていくことが期待できます。
また職務給制度によって、専門の技術や能力を持った社員がより多くの給与をもらえるようになりました。
この製薬会社では、他にさまざまな改革を進めているようです。
中小企業
中小企業では、フットワークが軽いこともあって、いろいろな改善案を実際に実施しながら試せるのが、大企業とは異なる点でしょう。
こんな事例もあります。会議時間を削減したいと考えたとある企業では、会議のための椅子もホワイトボードも会議室も用意しないという試みを実施したそうです。
会議参加者は早く会議を終わらせたいために、無駄な議題や報告もなく、結果として会議時間は大幅に短縮されました。
他の事例としてはスキルマップの作成、資料をすべてペーパレス化することや、業務時間の中に勉強時間を設けた会社もあります。
そういったユニークな改革を、求人でPRしている会社もあるようです。
まとめ
働き方改革は、現状の日本の抱える大きな課題と言えるでしょう。労働時間の削減や生産率の向上、社員1人ひとりの働き方を見直す時期が来ているとも言えます。
働き方改革の方法は一律ではなく、業種や業態にあった方法を採ることが好ましいです。それぞれの職場にあった問題点をピックアップして、それに見合う形で行えば、効果も自然と高くなります。
大企業による効率的かつ堅実な業務改善の例や、中小企業の中でもユニークな事例、すぐに取り組んで効果が出るような事例を参考にしつつ、自社業務の改善に取り組んでいきましょう。
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