現代企業に不可欠な EDR : エンドポイントセキュリティの新時代
2025/05/28 セキュリティ対策公開日 2025年5月28日 | 最終更新日 2025年5月28日
デジタル化の進展とリモートワークの普及により、企業のセキュリティ対策は大きな転換点を迎えています。従来の境界型セキュリティモデルでは対応しきれない脅威が増加し、エンドポイントセキュリティの重要性が急速に高まっています。
特に注目されているのが、 EDR (Endpoint Detection and Response)と呼ばれる新世代のセキュリティソリューションです。
本記事では、EDRの基本概念から具体的な機能、選定のポイントまで、情報システム担当者が知っておくべき包括的な情報を提供します。
エンドポイントセキュリティの現状と課題
エンドポイントの定義と範囲
「エンドポイント(Endpoint)」とは、ネットワークに接続されているPC、スマートフォン、タブレットなどの端末機器を指します。しかし、この定義は想像以上に広範囲で、サーバーやIoTデバイス、カメラやセンサーなども含まれる場合があります。
セキュリティソリューションを検討する際は、具体的に「何を」「どのように」守るのかを明確にすることが重要です。
なぜエンドポイントセキュリティが注目されるのか
エンドポイントセキュリティが注目される背景には、働き方の根本的な変化があります。
テレワークの普及により、従来の強固なファイアウォールで守られた社内ネットワークの外側に、多くのエンドポイント機器が配置されるようになりました。
社員は自宅、サテライトオフィス、カフェなど様々な場所から社内ネットワークに接続します。これらのリモート環境に、オフィスと同等のセキュリティレベルを確保することは容易ではありません。
そのため、エンドポイント機器自体に堅牢なセキュリティ対策を実装する必要性が高まっているのです。
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攻撃者の戦術変化
サイバー攻撃を実行する側も、こうしたセキュリティ対策が相対的に甘いエンドポイントを狙うようになっています。
典型的な攻撃パターンは以下の通りです:
・テレワーク用PCに侵入し、社内ネットワーク接続時に他システムへの横展開を図る
・マルウェア添付メールやフィッシングメールを利用した初期侵入
・改ざんされたWebサイトからのマルウェアダウンロード
・不正なSMSを利用したスマートフォンへの攻撃
・USBメモリなど物理媒体を利用した感染
EDRとは何か:従来型セキュリティとの違い
EDRの基本概念
EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイントでの脅威検知と対応を自動化するセキュリティソリューションです。
重要な点は、EDRが「侵入を完全に防ぐ」のではなく、「侵入されることを前提として、被害を最小限に抑える」ことを目的としていることです。
EDRは対象エンドポイントにエージェントと呼ばれるプログラムをインストールし、エンドポイントの状態を24時間365日監視します。不審な振る舞いを検知した場合、即座にネットワークから遮断し、他のリソースへの影響を最小限に抑えます。
EPP(Endpoint Protection Platform)との違い
エンドポイントセキュリティの文脈でよく混同されるのが、EDRとEPPの違いです。
EPP(従来型ウイルス対策ソフト)の特徴
・マルウェアのシグネチャファイルを使用
・パターンマッチングで既知の脅威を検出・ブロック
・予防的なアプローチ
・「家の扉を守る鍵」のような役割
EDRの特徴
・エンドポイントの挙動を常時監視
・未知の脅威や不審な振る舞いを検知
・検知後の対応・調査機能を提供
・「監視カメラとガードマン」のような役割
両者は相互補完的な関係にあり、どちらも重要なセキュリティ対策です。
最近では、EPP機能も統合したEDRソリューションが多く提供されています。
EDRの主要機能
EDRが提供する機能は、大きく「検知・初動対応」「記録」「調査」の3つのカテゴリに分けられます。
1. 検知・初動対応機能
・24時間365日の監視: すべてのエンドポイントを継続的に監視
・リアルタイム検知: サイバー攻撃の兆候を即座に検知
・自動通知: 攻撃検知時の管理者への即座の通知
・初動対応の自動化: ネットワーク遮断や隔離の自動実行
2. 記録機能
・包括的なログ記録: エンドポイントでのすべてのイベントを記録
・可視化: エンドポイントの状態をリアルタイムで可視化
・証跡保存: 説明責任を果たすための詳細な記録保持
3. 調査・分析機能
・被害状況の可視化: 侵入されたエンドポイントと影響範囲の特定
・攻撃分析: 攻撃手法や経路の詳細分析
・フォレンジック支援: 事後調査のための詳細情報提供
・将来の対策立案: 攻撃パターンの学習と対策改善
高度な分析機能
効果的な脅威検知には、
「どの挙動がサイバー攻撃の可能性が高いか」「どのIPアドレスへのアクセスが危険か」といった脅威インテリジェンス情報が不可欠です。
現代のEDRは以下の高度な機能を提供します。
・AIテクノロジーの活用: 機械学習による未知の脅威検知
・複数エンドポイントの相関分析: 横断的な攻撃パターンの検知
・外部脅威インテリジェンスとの連携: 最新の脅威情報の活用
・継続的な学習: 検知精度の継続的な向上
EDR選定のポイント
EDRソリューションを選択する際は、以下の観点から評価することが重要です。
1. 検知能力
既知・未知の脅威への対応
・既存のマルウェア検知能力
・新種のマルウェアやファイルレス攻撃への対応
・ゼロデイ攻撃の検知能力
技術的な検知手法
・AIテクノロジーの活用レベル
・機械学習による検知精度
・脅威インテリジェンスの更新頻度と品質
2. 調査・対応支援
調査機能の充実度
・フォレンジック機能の充実度
・攻撃経路の可視化能力
・影響範囲の特定精度
運用支援体制
・マネージドサービスの提供有無
・セキュリティ専門家による支援体制
・インシデント対応支援の内容
3. 導入・運用の容易さ
導入面での考慮点
・セキュリティ専門家不在でも導入可能か
・既存システムとの連携性
・エージェントの軽量性と安定性
運用面での考慮点
・直感的なユーザーインターフェース
・自動化機能の充実度
・運用負荷の軽減機能
4. コストパフォーマンス
導入コスト
・初期導入費用
・ライセンス体系の明確性
・追加機能のコスト
ランニングコスト
・月額・年額利用料金
・運用サポート費用
・クラウドサービス提供の有無
マネージドサービスという選択肢
マネージドサービスの重要性
多くの企業では、セキュリティに精通した専門人材の確保が困難です。
この課題を解決するために、EDR運用を専門事業者に委託するマネージドサービスが注目されています。
マネージドサービスの主なメリット
・24時間365日の専門的な監視
・インシデント発生時の迅速な対応
・専門知識を持った人材の活用
・運用コストの最適化
統合セキュリティサービス
最近では、EDR運用だけでなく、攻撃を受けた際の専門家による対応を含む統合的なセキュリティサービスも提供されています。
これらのサービスは、セキュリティ対策を包括的にアウトソーシングできるため、リソースが限られた企業にとって有効な選択肢となっています。
実装時の注意点
1. 段階的な導入
全エンドポイントへの一斉導入ではなく、重要度の高いシステムから段階的に導入することで、リスクを最小化できます。
2. 既存セキュリティ対策との連携
EDRは既存のセキュリティ対策を代替するものではなく、補完するものです。ファイアウォール、アンチウイルスソフト、その他のセキュリティツールとの適切な連携を設計する必要があります。
3. 社内体制の整備
EDRの効果を最大化するには、アラート対応手順の策定、担当者の教育、エスカレーション体制の構築が不可欠です。
4. 継続的な改善
脅威の進化に合わせて、検知ルールの調整、誤検知の削減、対応手順の見直しを継続的に行う必要があります。
今後の展望
AIとML(機械学習)の活用拡大
サイバー攻撃にAIが悪用されるケースが増加している一方で、EDRにおいてもAIテクノロジーの活用が進んでいます。未知の脅威検知精度の向上、誤検知の削減、自動対応機能の高度化が期待されています。
ゼロトラストアーキテクチャとの統合
「信頼しないことを前提とする」ゼロトラストセキュリティモデルにおいて、EDRは重要な構成要素となります。継続的な認証・認可と組み合わせた包括的なセキュリティ対策が標準となることが予想されます。
クラウドファーストの運用
EDRサーバーのクラウド化により、導入コストの削減と運用の簡素化が進んでいます。月額数百円から利用できるサービスも登場し、中小企業でも導入しやすい環境が整ってきています。
まとめ
EDRは、現代のサイバーセキュリティ対策において不可欠なソリューションです。
従来のEPPが「侵入を防ぐ」ことを主目的としているのに対し、
EDRは「侵入されることを前提として被害を最小化する」アプローチを取ります。
・EDRとEPPは補完関係にあります。どちらも重要なセキュリティ対策であり、統合的な運用が効果的
・継続的な監視と記録24時間365日の監視により、迅速な脅威検知と詳細な証跡保持を実現
・高度な分析機能でAIテクノロジーや脅威インテリジェンスを活用した精度の高い脅威検知
・マネージドサービスの活用する事で専門人材不足を補う有効な選択肢になります。
・適切な製品選定により検知能力、調査支援、導入容易さ、コストを総合的に評価
テレワークの普及により、エンドポイントセキュリティの重要性は今後も高まり続けるでしょう。EDRの導入を検討する際は、自社のセキュリティ要件を明確にし、段階的な実装とマネージドサービスの活用も視野に入れた包括的な計画必要です。
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