ランサムウェア対策におけるゼロトラストとバックアップの重要性

2025/08/22 セキュリティ対策

企業リスク診断

公開日 2025年8月22日 | 最終更新日 2025年8月22日

ランサムウェア とは?

ランサムウェア は、企業活動に甚大な影響を与えるサイバー攻撃の一種です。このマルウェアは、コンピュータやネットワークシステムに侵入し、データを暗号化することで利用不能にします。攻撃者は、データの復元と引き換えに多額の身代金(Ransom)を要求します。支払いに応じてもデータが完全に復元される保証がない上、攻撃者に金銭を渡すことで再度の攻撃を招くリスクもあります。

ランサムウェア攻撃の特徴と進化

従来のランサムウェア攻撃は、不特定多数への「ばら撒き型攻撃」が典型でした。しかし、近年では特定の企業や組織を狙った「標的型攻撃」が主流になり、その手法も高度化しています。

攻撃者は、次のような特徴的な手法を用います
・ システム内に長期間潜伏し、ネットワーク全体に感染を広げる。
・ 暗号化したデータを公開すると脅迫する「二重脅迫型」攻撃。

被害が発覚すると、システムがロックされ業務が停止し、顧客や取引先との信頼性が失われるケースも少なくありません。

 

ゼロトラストに基づくサイバーセキュリティ対策

ランサムウェアの脅威に対抗する上で、従来の「境界型セキュリティ」では不十分です。これに代わるセキュリティモデルとして注目されているのが「ゼロトラストセキュリティ」です。

ゼロトラストとは?

ゼロトラストの基本的な考え方は、「誰も信頼しない」という原則に基づいています。これは、社内外を問わずすべてのアクセスを疑うという発想に基づき、信頼性を確認した上でアクセスを許可します。

このモデルは、次のようなセキュリティ課題を解決します
・内部不正や攻撃者によるネットワーク内の横展開を防止。
・クラウド環境やリモートワークに対応する柔軟性のあるセキュリティを提供。

ゼロトラストの具体的な対策例

ゼロトラストを実現するためには、以下のような技術的なプロセスを導入することが重要です。

■ID認証の徹底
・誰が、どのリソースに、どのタイミングでアクセスしているかを常にチェック。
・ IDaaS(Identity as a Service)を活用したシングルサインオン(SSO)の導入。

■ログの収集とリアルタイム監視
・SIEM(セキュリティ情報とイベント管理)ツールにより、ネットワークとアクセスログを継続的に監視。
・異常検知や攻撃パターンの分析を迅速化。

■データ漏洩防止(DLP)
・機密データの持ち出しや不正使用を防ぐ。
・ファイル暗号化や自動ポリシー適用ツールを併用することで、管理体制を強化。

ゼロトラスト導入のメリット

・セキュリティの向上: 攻撃者や不正アクセス根絶。
・業務の効率化: クラウド環境下でシームレスかつ安全な運用を実現。
・可視性の向上: 社内のアクセス状況やシステム利用状況を一元的に把握。

こうしたゼロトラストの取り組みを導入することで、ランサムウェア攻撃による被害の防止と緩和の両面で効果が期待できます。

ランサムウェア対策としてのバックアップ戦略

ゼロトラストは攻撃の防御強化に効果的ですが、ランサムウェアの完全な回避は難しい現実があります。そのため、ランサムウェア攻撃後にシステムや業務を復旧できるバックアップ戦略の構築が重要になります。

何をバックアップすべきか?(バックアップ対象)

すべてのデータをバックアップするのは理想ですが、ストレージや管理コストの観点から、優先順位を明確にすることが必要です。以下のデータは必ずバックアップ対象に含めるべきです
・ユーザーデータ: 社内文書、スプレッドシート、営業資料など。
・業務アプリケーションやシステム情報: CRM、ERPなどの主要システム。
・OSや設定情報: システム全体を復元するための基本情報。

どのようにバックアップするか?(バックアップ方法)

バックアップの方法は3種類に大別され、データの変更頻度や重要性によって適切な手法を選択します。

■フルバックアップ
・システム全体をコピーする方法。完全性は高いが、時間とストレージ容量を大きく消費。
■増分バックアップ
・直近のバックアップ以降に変更があったデータのみを保存。効率的だが、復元時に全バックアップデータを統合する必要がある。
■差分バックアップ
・最初のフルバックアップ後の変更分だけを保存する方法。

効率と可用性を両立させるため、フルバックアップ+増分/差分バックアップの組み合わせが一般的に推奨されます。

データをどこに保存すべきか?(データ保存先)

バックアップの保存先はリスク分散を考慮し、複数の選択肢を組み合わせるべきです。

■クラウド保存
外部災害への耐性が強く、保管スペースの管理負担が軽減される。
■オンプレミス保存(バックアップアプライアンス)
重要データをローカルで迅速に復元。
■オフラインメディア(テープ、外付けHDD)
ネットワークから物理的に切り離し、ランサムウェア感染を防止。

保存したバックアップの保持期間は?

ランサムウェア攻撃は潜伏期間が長いケースが多く、バックアップ対象がすでに感染している可能性も考慮すべきです。そのため、1年以上の保存期間を推奨し、複数世代のバックアップを保持して復元ポイントを増やすことが重要です。

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まとめ

ランサムウェアの脅威を無視することは、企業の存続リスクを高めます。しかし、適切なゼロトラストセキュリティとバックアップ戦略があれば、ランサムウェアによる深刻な影響を回避し、迅速な復旧が可能です。

・ランサムウェアのリスク把握と未然防止。
・ゼロトラスト実装によるアクセス制御の強化。
・バックアップ体制構築による継続的な業務守備。

これらを統合して対策を講じることで、企業全体のセキュリティ体制を強化するとともに、万が一のインシデント発生時にも堅実な復旧手段を確保することができます。今こそ、自社の防御力を見直す時です。

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