SaaS市場は今後どうなる?SaaSの基礎知識や動向のまとめ

2020/03/17 SaaS

企業リスク診断

クラウドサービスの普及によって、SaaS市場は急速な成長を遂げています。そのため、今後SaaS市場はどうなっていくのか、多くの企業や投資家の注目が集まっているようです。

この記事ではSaaSの基礎知識や動向、SaaS市場の今後の展望について解説します。

クラウドについて知ろう

クラウドについて知ろう
ここ最近、クラウドサービスやクラウドファンディングなど、『クラウド』という単語を耳にする機会は多くありませんか。

SaaSとクラウドは密接な関係があります。SaaSについて知るためにも、まずはクラウドの基本知識を押さえておきましょう。

クラウドとは

クラウドは、インターネットを介してデータベースやアプリケーションを利用するサービスのことを指します。

近年、IoTやAI技術促進に伴う形で、クラウドサービスの普及も企業間で広がりを見せています。『クラウドファースト』という言葉ができるほど、クラウド化の波はさまざま業界に及んでいるのが現状です。

クラウドの最大の特徴は、ソフトを直接デバイスにダウンロードする必要がないという点です。これによりビジネスの上で、さまざまなメリットがあります。

ASPとは

ASP(Application Service Provider)はインターネットを通じて提供するソフトウェア、あるいはソフトウェアを提供している事業者のことです。

ASPは性質上、クラウド経由で展開されます。ASPという言葉自体は2000年代に入る前から存在し、最近ではクラウドサービスの同義語として使われることもあります。

ASPのメリットとデメリット

ASPを利用するメリットは、第1に初期費用や管理費がかからないというコスト面にあります。最初からシステムが構築されているので準備日数が必要なく、また専門的な知識がなくても利用できるというハードルの低さもメリットでしょう。

一方でデメリットとして挙げられるのは、あくまでインターネット上にあるアプリケーションを利用するだけなので、カスタムが自由にできない、できても幅が狭いという点が挙げられるでしょう。

そのため、ASPの利用には自分が求めているサービスを探すか、どこかで妥協する必要が出てきてしまいます。

SaaSや関連用語について知ろう

SaaSや関連用語について知ろう
クラウドが提供するサービスは多岐に渡りますが、『SaaS』『PaaS』『IaaS』の3つに分けられます。

この3つがどういったものなのかを、それぞれ解説してきましょう。

SaaSとは

SaaS(Software as a Service)はクラウド経由で提供するソフトウェアのことで、クラウドサービスと言うとSaaSを指す場合も多いです。ASPとほぼ同義ですが、ASPは古い時代の用語で、SaaSは最新の用語と言えます。

プロバイダ側でソフトウェアを提供し、サービス登録をしたユーザーがインターネットを経由してその機能を利用できるという形態のことを指します。

GmailやYahoo!メールといったメールサービス、SNSやブログもSaaSに該当するものです。

自分で設計する場合と比較して自由度が低い傾向にありますが、進化がめざましく、カスタマイズについても広く行えるサービスが増えてきています。

PaaSとは

PaaS(Platform as a Service)は、クラウド経由でプラットフォームを提供するサービスで、アプリケーションに必要なプログラム環境やデータベースなどのことです。システムの開発や運営管理の経験がある人にとっては馴染み深い言葉ではないでしょうか。

専門的なプログラミング知識が不要で敷居が低いのですが、その代わりに自由度は低くなっています。Webアプリの開発に用いられるGoogle Apps Engineや、Herokuなどが代表的と言えるでしょう。

IaaSとは

IaaS(Infrastructure as a Service)はサーバーやストレージ、ネットワークといった幅広い形態を提供するサービスを指す単語です。

上で挙げたSaaSやPaaSよりも自由度が高く、OSやハードウェアを比較的自由に選ぶことが可能です。

ただし、その分上の2つよりもプログラミング知識が要求されます。代表的なサービスは、Microsoft AzureやGoogle Compute Engineなどです。

 

SaaS、PaaS、IaaSの違いについてはこちらの記事でも紹介しています。

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SaaSのタイプ

SaaSのタイプ
SaaSは必要な機能をピックアップして利用できるソフトウェアです。文書管理やスケジュール管理といった用途ごとに分けたソフトがいくつかあります。

SaaSは『Horizontal SaaS』と『Vertical SaaS』の2つの軸に分類されます。

Horizontal SaaS

マーケティングや営業、システム開発など、さまざまな業界に共通する業務があります。Horizontal SaaSは、そのような特定の一般的な業務に特化したソフトウェアです。

営業やサポート、マーケティングに用いられる『Salesforce』、人事管理に優れた『Workday』などのソフトが代表的で、さまざまな業界に対応できます。

Vertical SaaS

一方のVertical SaaSですが、これは1つの業界に特化したサービスです。例えば、『PlanGrid』は建築分野に特化されたツールで、建築の図面や作業工程などを、チーム全員で共有することを目的に作られています。

他にも、物流分野に特化した『Flexport』というソフトウェアもあります。このようにその業界での作業工程の管理やデータの収集や分析を行い、企業価値をさらに高めることを目的として作られているSaaSです。

SaaSのメリットとデメリット

SaaSのメリットとデメリット
SaaSは多くの業態に深い関わりを持っていて、年々その注目度を高めています。

SaaSを採用する企業はどういった点に魅力を感じて利用しているのか、また利用する上でどのような注意点があるのかをあわせて見ていきましょう。

メリット

SaaSの魅力はASP同様、初期費用がかからないという点が挙げられます。Horizontal SaaSのように業務サイクルの中に容易に組み込みやすいというのもメリットです。

コスト面や、導入による業務負荷が軽いという利点から、中小企業やベンチャーでも気軽に採用しやすいという利点があります。

また、インターネットを通じたソフトウェアを用いるので、どのデバイスからでも利用できるというのもメリットでしょう。

大企業においても、日報や業務に関する報告が外出先でも可能になり、取引先と同じSaaSの導入によって、メールや電話よりも情報共有や相談が容易に行えるようになるというのも利点です。

デメリット

一方でSaaSが抱えている問題点は何かというと、それは利用環境を外部に依存しているという点に他なりません。

提供側が維持管理をすべて行ってくれるのはメリットではあるのですが、逆に言えば利用者側による機能追加やカスタマイズは行えないということでもあります。

さらには提供側が突然サービスの変更や終了をした場合も、それに従うしかありません。会社の業務の基幹にまでSaaSの影響が及んでいる場合、システムの大幅な見直しを余儀なくされてしまうのです。

SaaSの魅力と販売モデル

SaaSの魅力と販売モデル
SaaSが採用されるメリットについてはこれまで述べてきましたが、さらにSaaSを開発する事業者や投資家、顧客のそれぞれの視点で、どのような点に魅力があるのか、販売モデルと併せて解説していきます。

3つの視点からみたSaaSの魅力

SaaSを利用する顧客、開発者、そして投資家の3つの視点から見たSaaSの魅力とはなんでしょうか?

まず、顧客にとっての魅力ですが、やはり費用対効果が良いことによる導入のしやすさと、スムーズなアップデートです。SaaSを利用している場合は、新機能の追加やセキュリティの更新が頻繁に行われ、常に最新版の恩恵を受けられるのです。

次に開発者にとっての魅力とは、継続的なビジネスが生まれるという点でしょう。SaaSの場合、発売すればそれで終わりではなく、継続的に利用され、安定した収益につながっていきます。

これは、SaaSに投資する企業や投資家にとっても魅力になり得ます。従来のソフトとは違い、有料オプションの追加や新機能、月額利用料によって継続的な利益が見込めるので、長期目線で投資プランを立てやすいのです。

ロータッチモデルとハイタッチモデル

SaaSのビジネスモデルはクライアントへのフィードバックやアップデートを頻繁に行うことから、顧客に寄り添う形でビジネスを導く『カスタマーサクセス』が行いやすい事業です。

カスタマーサクセスの方法は『ロータッチモデル』と『ハイタッチモデル』に分類されます。ハイタッチモデルでは、顧客に対して柔軟で手厚いサポートを行い、ロータッチモデルでは、多数の顧客に対して組織的に対応します。

ロータッチモデルは、従業員規模の小さい顧客に対するアプローチです。電話やメールなどで組織的にサポートし、多くの顧客をカバーします。

ハイタッチモデルは、いわゆる大口顧客に対するアプローチです。その顧客の専用プランの提供や、直接訪問による継続的なサポートなどを行い、収益を高めていく方法です。

SaaSの市場規模と動向は?

SaaSの市場規模と動向
SaaSの市場は今後どのようになっていくのでしょうか。国内市場と海外市場に分けてそれぞれの規模と今後の動きを解説します。

国内市場規模と予測

国内を見ていくと、SaaSの市場自体は現在も持続的な成長を続けており、2016年度の時点で3000億円以上の市場規模となりました。

SaaSのクラウド型のビジネスモデルが国内市場で急速な成長を見せており、2020年の段階で、SaaSが従来のオンプレミス型の市場規模よりも大きくなるとの見方もあります。

クラウドサービスが今後もさらに成長を続ける中で、SaaSが占めるシェアと重要性が今後も増していくと見て良さそうです

世界市場規模と予測

アメリカのシスコ社の公表によれば、クラウドサービス市場は今後世界的にさらに拡張を続け、2019年には世界のデータセンターに関わるトラフィックの約80%がクラウドによって処理されるという予想が出ています。

特に世界のクラウドサービス市場における米国企業のシェアは、約半数を占めており、Amazonのクラウドである『AWS』をはじめ、顧客データや社内情報を管理する情報系システムを担うクラウド型ソフトの利用は、今後も加速していくものと見られています。

クラウドサービスの主要ジャンルであるSaaSは、AIやIoTとの組み合わせによって、さまざまな形での発展が期待されています。今後もSaaSの世界市場は拡大していくと見て良いでしょう。

SaaS市場の今後について

SaaSの今後について
最後に、SaaSが今後どのようになっていくのか、将来の展望や今後のあり方を見ていきましょう。

SaaSのトレンド

現状のSaaSのトレンドは『サブスクリプション型』のビジネスモデルです。

これはライセンス料を一度だけ払って永続利用をする従来の販売方法とは異なり、月額や年間利用料という形で料金が発生する方法で、今後の市場の主流になっていくことが予想されます。

導入しやすいというメリットから、システム構築がしやすく、そこから各企業や業態に対応する形でのカスタマーサクセスによる継続的な収益をあげられるというのが、顧客側にとっても開発者側にとっても非常に有利なトレンドです。

活用が進むテクノロジー

SaaSのテクノロジーは、現代社会のさまざまな面での浸透が進んでいます。

スマートフォンやタブレットデバイス、スクリーンレス化に伴うサービス、VRやARによる会議や研修に対するソリューションの提供、仮想通貨などにおけるブロックチェーンなどに対してもSaaSのサービスが活用されているのです。

世界的大手企業であるMicrosoftやGoogleもSaaSをさまざまな形で積極的に利用・提供していることから、他の企業も続く可能性が大きいでしょう。

まとめ

世界中でインターネットを利用する個人と、サービスを提供する企業のニーズがマッチングしていることを背景として、SaaSの市場は今後も拡大するものと予想されています。

取引先とのやりとりにも、今後はクラウドサービスが主軸になっていくことも考えられます。

スケジュール調整や資料の管理といった単純業務を大幅に効率化するなど、社内リソースにおいても、SaaSを利用することで大きな改善が期待できるのです。

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